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「絵というのは、本格的に描こうとしても、誰でもそう簡単に描けるものではありません。
でも、コンピュータのいいところは、いい素材さえあれば自分で作ったようなことができるわけです。
素材の組み合わせしだいによっては、素人でも自分のクリエイティブな部分を使って、凄くおもしろいところまでいけるんです。
そんな感じで、自分で楽しいホームページを作ればいい」そうした中で話が動き出した。
コンピュータ関連書籍のインプレスと、ホームページの素材集を販売する計画が持ち上がった。
アイコンやバナーなどの素材をCDIROMに入れ、書籍につけて売る。
人脈を生かした格好である。
そうした経緯があり、シフカは一般向けのコンテンツビジネスに手を着けることになったのだが、最初にそのむずかしさを知ったのは、値段の付け方である。
それまでは、企業からの受注の仕事では、大きいイラストだと四、五万円稼げた。
高いのになるとアイコン一点が五万からI〇万円という値段もあった。
しかし、素材集の「本」となれば、話か違うのが当たり前である。
三〇〇〇点人って三〇〇〇円、一点)円の世界であった。
カットイラストの原価といえば、イラストレイダーの人件費程度なのだが、結局は一点に費やす原価は、一万円から二万円程度。
売り上げ、あるいは会社の利益を無視するにしても、一点二万円ぐらいで売らないと合わない。
片や新しいビジネスのサンプルの構築、片や書籍であるわけで、同じコンテンツでも、プラットフォームが違えばビジネスの手法も違うという例である。
契約は基本的に一冊売れれば売れた分の何パーセントかがシフカにロイヤリティとして入る、という印税の形だった。
最初、長田氏自身も、意識改革が必要だった、と語る。
「新しい市場を作るとすれば、高くは買ってもらえない。
でも逆に多く売れるなら、思い切り安くする。
一点一円以下もおもしろい」(長田氏)という発想の転換によって決断したのだった。
その本意は、「市場を自分たちで作るしかない」という決断である。
長田氏は、ある部分でデジタルコンテンツのビジネスを進める企業、すなわちコンテンツプロバイダーや流通業者のやり方に疑問を感じるところがあった。
実際、いろいろな人たちに話を聞いたのだが、ほかのクリエイターも同様の感覚を持っている。
「既存のメーカー、代理店は自分たちを守ろうとする。
自分たちを守るためにどうしていくかっていうところから始まる。
だから、まずシステムありきで、コンテンツをどう評価するかを研究していない」(某クリエイター)。
長田氏もいう。
「情報産業なんて、とくにクリエイターが自由におもしろい発想を出さないと生き残れない」たとえば、企業の論理ではこうなる。
企業がクリエイターにCGの仕事を依頼する。
クリエイターはいろいろアイデアを持って行くが、そのプロジェクトに、いつのまにかあるメーカーがスポンサーについて、「うちのプリンターでなければ出ないような色を使って」と制限事項を加え始める。
「そういうことをいわれたら発想はアウトですよ」(某クリエイター)。
シフカの長田氏も、同様の「不勉強さ」を感じるエピソードがあった。
同社が作ったホームページ用の素材を作って、あるメーカーに売り込みに行った。
そこで、「こういうものを作っているのですが、一緒にやりましょう」と口説いた。
すると、その担当者は、「うちの社内でもできるから間に合っています」と答えた。
「自社の社員にやらせれば、タダでできる」と平気で思っているようだった。
しかし、質のいいものを作れるとは限らない。
良し悪しの区別がつかないからだ。
また、さまざまなクリエイターから聞く意見を総合すると、とくにデジタルコンテンツビジネスを進めている大手のメーカーには、「目利き」が少ないということだった。
たとえば、ある会社が、「今度、ホビー的な要素の強いイラストを売ったらどうでしょう」という話を大企業に持ち込んだ。
その企業は、いま、コンテンツを集めているという話を聞いたからだ。
持ち込んだクリエイターは四〇代の人で、先方も同年代の部長だった。
しかし、その部長は、「こんなの儲からないから、やめたほうがいい」と最初から耳を傾けようとしない人もいる。
クリエイターの感覚としては、同じ断られるにしても、コンテンツの内容を評価されたい。
違う部分で「ここはこうした方がいい」という意見が聞きたいのである。
大企業の担当者は、いきなり値段の話になる。
しかし、コンテンツビジネスの本質として、値段は原価から決めるものではない。
むしろユーザーのフトコロ具合を考えて、「きりのいいところで1000円にしよう」という具合で決まる。
根本的に儲かる儲からないの話はできない。
「大手の会社の場合、人事異動でどんどん人を替えたりします。
だから、その道のオーソリティーがいないんです。
インターネット事業部にしても、インターネットのことをちゃんとすべてわかっている人がやらないとダメ。
基本的にビジネス経営者側とクリエイターの間には差はあるものだが、その中でも違いは出てくる。
「もちろん、個々の企業で差はありますが、かえってベンチャーの若い社長の人たちの方が話は早いですね。
〃私だったらこういうアイデア入れるな”とか。
ここに売って行こうよ”とか、具休的な話になります」(長田氏)。
そういう状況の中で長田氏が思いついたのが、「デジタルコンテンツは誰もやったことがない市場なのだから、理解する人も少ない。
いっそのこと、新しい市場を作るくらいの意気込みでなければダメだ1である。
「結局、二一世紀は人間関係だと思うんです。
インターネットは、世界中の人がネットワークで結ばれている。
そこが凄いわけで、極端な話、一日一〇〇〇万人の人がコンテンツを買ってくれれば、その値段は一円だっていいわけです」長田氏が決断したのは、実際に出版社の担当者が、「でも、何万部出るんです。
一緒に市場を作りましょう」といった一言だった。
コンテンツは”株”のようなものだと長田氏はこのようにして素材集の出版に携わるようになったが、次のハードルは実際に本を作ったときに生まれた。
印税で入ってくる金額は、制作原価を考えるとトントンか、少し赤字だったのである。
[こんなことやってて何の意味があるのか]と思うのが普通だ。
ここで長田氏は、「継続すれば、たまっていくだろう」と再度発想を転換した。
実際、大手の出版社とのビジネスは、一点一点の単価が安くても、売れれば継続できることがわかった。
定期的な収入が見込める。
継続していくことによって作品がたまっていく。
事実、この出版社との取り引きは六年におよび、最終的にはコンテンツの数が五万点になった。
さらに数がたまったときに、別の企業が買いに来る、ということがあった。
あるパソコンメーカーが、自社のパソコンにバンドルしたいと話を持ちかけてきたわけだ。
通常バンドルが一個決まれば、数百万円レベルの収入が入ってくる。
また、最初の印税のほかに再度印税が入ってくることもあった。
つまり、コンテンツを大量にストックすれば、それだけ価値が出るということである。
素材集にあるコンテンツの中からいくつかのレイアウトを抽出して編集し直せば、別の商品になる。
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